投資・マネー書籍

投資・マネー書籍

  • トレード関連の書には、良書・凡書・悪書が入り乱れています。また、テクニカルや手法の解説は、時代遅れになりやすいですが、人のメンタル・心理に関することはいつまで経っても変わらないため、古い書であっても参考になります。

NHKスペシャル マネー革命〈第1巻〉巨大ヘッジファンドの攻防


相田 洋/著

ヘッジファンドのトレーダーへのインタビュー部分は必読です。手法やシステムに関してかなり具体的に話をしています。手法の確立やシステム開発において、大きなヒントになるでしょう。
映像の方は、有名なトレーダーや学者が登場し、感慨深いものがありますが、手法やシステムに関することは少ないです。

NHKスペシャル マネー革命〈第2巻〉金融工学の旗手たち


相田 洋/著

世界で最初の先物市場は、大阪堂島で生まれます。1971年8月のニクソンショックより、固定相場制が終わり変動相場制に移行します。これにより通貨の先物市場は生まれます。こうした金融市場の歴史が判りやすく具体的に描かれています。
また、ブラック-ショールズ方程式の解説では、それを読者に判りやすく伝えようという努力がされており、その試みはある程度成功していると思います。

NHKスペシャル マネー革命〈第3巻〉リスクが地球を駆けめぐる


相田 洋/著

巨大な機関投資家でもリスク管理がおざなりだとあっさり破綻する例が幾つか書かれています。大和銀行、ベアリングズ銀行、カリフォルニア州オレンジ郡。トレードで成功するための条件は、資金の多寡では無く、リスク管理・資金管理が重要だという教訓になります。

ウォール街のランダム・ウォーカー


バートン マルキール/著

過去のバブルについての部分はよくまとまっていて、読む価値があります。しかし、結論としてのマーケットはランダムウォークであるというのは誤りです。第一、市場が効率的であるが故にランダムウォークというのなら、バブルは発生しないのですが、発生した事例を数多く載せているのは、その主張の誤りを自ら証明していることになります。
従って、自身の主張を裏付けとしてバブルを解説しているのだけれど、それは裏付けになっていません。しかも、著者は、それをあえて無視するのですから。

大暴落1929


ジョン K ガルブレイス/著

1929年に起こった恐慌を判りやすく描写していく。バブルが発生する前、バブルが拡大してゆく様子、そして突然の崩壊。何度も繰り返されるバブルの典型であり、この教訓を学ばない人がその後も何度もバブルを繰り返す。
愚かな専門家がバブルを煽り、犯罪者達が集まる。
見識ある助言は無視され、それどころか非難の対象にすらなる。人は、信じたくないことに対して、それが確かなことであっても拒否しがちなのでしょう。
日本の土地バブルの時も、異常な値段となった土地価格を正当化する言説にあふれました。それがでたらめなのは判りきっていたことなのですが、喜んで騙される人が大勢いたわけです。
日本語の翻訳もよく、すらすら読めます。この書は小品ながら、読み取れる教訓は多いです。

ただ、バブルの最中は皆が幸せになります。問題は、バブルがはじけた後に経済が不安定になることです。

リスク




ピーター バーンスタイン/著

不確実なことを分析・制御しようとする人間の取り組みに関する歴史書。リスクに対処する方法はその歴史を記述する中で語られますが、それらの方法を現在に応用して実行するための技術書ではありません。
数式はほとんど出てきませんが、だからといって読み進めるのに判りやすいというわけではなく、確率・統計と金融ファイナンスとの素養が読者に要求されています。その為、これらのことに関して前もって基本的な事を学んでおくと、この書への理解がより深まるでしょう。
大著であるため、人によって興味を引かれる部分が大きくことなるでしょう。私にとっては、以下の部分を現代に当てはめると何だろう、と考えると興味深い点です。

ケトレーは正規分布に心酔するあまり、行きすぎた主張を犯していることは明白である。にもかかわらず、彼の分析はその当時には大きな影響力を持っていた。後年の著名な数学者であり経済学者でもあるフランシス・イシドロ・エッジワース(Francis Ysidro Edgeworth)は、正規分布が存在しない、あるいは純粋な正規分布として認められる条件を満たしていないようなケースにさえ正規分布を発見しようとする風潮を差し、「ケトリスムス(ケトレー主義)」という造語をつくっている。(p.221)

まぐれ


ナシーム ニコラス タレブ/著

皮肉にあふれているのでそれに辟易する人もいるかもしれませんが、トレードを行う人のみならず、多くに人にとって新鮮な知的発見を行える書です。
この書の原書第一版は大きく誤解を受けたようで、日本語版のもとになった第二版では最初に

私たちの脳みそは確率が高いとか低いとかの話が簡単にわかるようにはできていない。すぐ「あるかないか」なんていう極端な話になってしまう。この本で書いたのは「物事は私たちが思っているよりもたまたまなんだ」ということで、「物事は全部たまたまなんだ」ではないということがなかなかわかってもらえない。(p.vii)

とはっきりと書いています。
著者は、成功の多くはまぐれだと主張するけれども、努力することで成功するのを否定しているわけではありません。

トレーダーにとっては、120~122ページに書かれている事柄を頭の中にたたき込んでおき、合理性に反した感情によるトレードを行いそうになる際には、それらを思い出す必要があるでしょう。
例えば、

自分のポジションと結婚する。(・・・)いったん抱いた考えに忠節を尽くすのは、トレーダーにとっても科学者にとっても、誰にとってもよくないことだ。 シナリオを変える。損をしているときは「長期的には」などと言いつつ投資家になる。

など、遅かれ早かれ破綻するトレーダーの特徴がまとめてあります。

外国に投資する投資家にとっては、次のことをよく勉強しておく必要があるでしょう。

今、一九〇〇年で、投資対象は数百だ。アルゼンチン、ロシア帝国、大英帝国、統一ドイツ帝国、その他たくさんの国がある。合理的な人なら、アメリカみたいな発展途上国に全額投資したりはしないだろう。ロシアやアルゼンチンにも投資するはずだ。その後どうなったかはよく知られている。イギリスやアメリカの株式市場は大きく上昇したけれど、ロシア帝国の市場に投資した人の手元に残ったのは微妙な質の壁紙ぐらいだ。(p.205)

著者はまぐれの実例として書いていますが、ここの国名を2010年に合わせて入れ替えて考えてみると良いでしょう。今、2010年で、投資対象は数百あります。ブラジル、アメリカ、日本、中国、その他たくさんの国があります。といった風に。
全ての発展途上国が順調に発展するわけでも無く、揺るがないと思われた国が倒れる。アルゼンチンのように輝かしい未来が約束されているように見えた国が混乱に陥り長く低迷した歴史を知っておくべきです。そのような事が再び起こることは無いと誰が言えるでしょうか。

投資苑 - 心理・戦略・資金管理


アレキサンダー エルダー/著

題名はおそらく広辞苑に倣った物でしょう。広辞苑の「辞苑」は、東晋の葛洪(かっこう)の著「字苑」に因むもの。他に、日本では、加賀藩五代藩主・前田綱紀による「桑華字苑」 「主に文字や語彙について書かれた百科辞典的なもの」があります。

では、「苑」の意は何か?
明鏡国語辞典では、

1.花・野菜・果樹などを栽培する一区画の土地。また、広い庭。庭園。「桜の─」
2.ある物事が行われる場所。ある特定の場所。「学びの─

ということで、場という意でしょう。そのため、「字苑」は文字などに関する場と判断できます。それを演繹して考えると、「投資苑」は、投資にまつわる場、投資に関する百科事典となります。
ただし、原題は Trading for a Living(トレーディングで生活する方法)ですから、日本語の題名とは異なります。
日本語の副題は「心理・戦略・資金管理」とあり、百科事典らしく、投資に関する事柄を網羅していると主張しているようです。

さて、長々と題名に関して書き連ねましたが、私はこの題名の意味が気にかかったからです。気になる以上、私はそれを調べてゆきます。今はネットで楽に調べることができますが、一昔前は書籍の百科全書で関連事項を調べていったり関連する専門書を読んだりとしていました。当時の私は百科全書派を自負したものです。
このように、何か気にかかることがあったら、それについて考えたり、調べたり、研究したり、実験したり、分析したりします。こうした行いは、トレードの手法・システムを作成し確立するために大切なことだと考えます。投資やお金に関する文章を読んでいて、気にかかることがあったら、自分で改めてそれを調べてみる、更に追求して研究してみる、といった行いから、新しい手法やシステムを思いつくことがあります。 ビギナー向けの解説では、株での移動平均のゴールデンクロスは買いの目安とされていますが、それが本当に有効なのかデータを用いて検証してみる姿勢が大切です。そして、今では、移動平均のゴールデンクロスは役に立たないとする検証結果が出ていますが、その検証結果が正しいか自分で調べてみる姿勢が大切なのです。更に追求して研究するとは、例えば、株の移動平均が駄目ならFXならどうだろう、と調べてみるのです。
トレードや投資にまつわることに関して、いろんな人がいろんな事を言っており、何が正解で何が間違っているのか判断がつかない場合があります。他人の意見をそのまま受け入れるのでは無く、最初は自分で調べる・考えることが大切です。斜めに構えて何事も否定するのもいけませんが、自分で考えず鵜呑みにするのもいけません。そして、是と判断したら素直に取り入れることが肝要です。

この書に書かれている、戦略とされているテクニカル指標の解説は、今となっては冗長で、それらのテクニカルを学んだ人には新しい知見を得ることはあまり無いかもしれません。しかし、心理・資金管理は今でも有効で読む価値があります。

 成功するトレーダーのゴールは最高のトレードをすることです。おカネは二の次なのです。
(・・・)
 トレードの途中で銭勘定をするようになったら、それはあなたに警告信号を発しているのです。すなわち、それは感情が入り込んできて、あなたの知性を打ち負かしてしまう結果、このままでは損してしまうことを警告するのです。もし自分の心からおカネのことが追い払えない場合、トレードを手仕舞うことは正しいことなのです。(P.448-449)

説得力のある指摘です。トレードの最中には、優れたトレードを行うことに集中すべきで、お金のことを考えてはいけない。優れたトレードを行うことで結果が付いてくるのであり、最初から結果(お金)について考えることは優れたトレードにならない。優れたトレードには、感情が入り込んではならない。目指すべきトレーダーの心理がここに示されています。

トレーダーの心理学―トレーディングコーチが伝授する達人への道


アリ キエフ/著

訳文が悪いのか原文の問題なのか判りませんが、読みにくく、一読しただけでは理解できない部分も多く、読み終えるまでに時間がかかります。それでもなお、トレードでの成功を目指す人ならこの書から得るものがあるでしょう。この書を読んで、トレードでの恐れ・不安・後悔・怒り・陶酔感・欲望などの感情を上手に処理できるようになるためのヒントを得られます。例えば、

これは視覚化を利用するときの重要な一面で、望まないイメージを「避ける」のではなく、望むイメージに「向かって」考える必要がある。「避ける」思考がうまくいくことはまずないが、「向かって」いく思考はたいていうまくいく(これは、脳には二つの矛盾した考えを同時に持つことができないという特異な性質があるため)。(P.256)

は、おそらく「認知的不協和」に基づいての記載だと思いますが、心理学に興味の無かった私には新しい知識となりました。一流のアスリートがメンタルのトレーニングを行うように、トレーダーもまた心理学に基づきメンタルを強化することで成果を上げることができるでしょう。

著者はヘッジファンドのトレーダーとの会話を通じて、彼らのコーチ役となります。私にはトレードでのコーチはいなかったし、コーチの影響がどの程度あるのか経験上からは判りません。仮にコーチがいたとしたら、頼もしく感じるでしょう。そして、私が手作業で発注をしているトレーダーなら、より優れたパフォーマンスを上げることが出来るかもしれません。ただし、現時点での私のトレードはシステムトレードを自動売買により行っているのであり、私の感情とは無関係にPCが淡々と売買をしています。ザラ場も見ている必要がないし、損切りもPCが行うので躊躇することも無いです。トレードでのメンタルコントロールが必要な部分は、負けが続いている時でも自分の裁量でシステムを止めないこと、につきます。そのため、手作業で売買をしているトレーダーに較べ、はるかに心理的負担は少ないです。この書に登場する一流のヘッジファンドのトレーダーですらメンタルコントロールを行うのに苦労しているのであり、やはり、勝てるシステム(あるいは手法)の開発よりメンタルをコントロールする方が難しいのでしょう。

メンタルのトレーニングを行ってもそれの成果があがらず、どうしても、トレードのプレッシャーやストレスをうまくあしらうことが出来なかったり、トレードへの集中力が途切れたりするのなら、自動売買によってメンタルの問題を回避することを検討して下さい。
PCの普及前に個人での自動売買はほぼあり得ませんでしたが、今はそれが出来るのですし、この有効な手段を使わない手はありません。

賢いはずのあなたが、なぜお金で失敗するのか


ゲーリー ベルスキー/著

行動経済学と実例に基づいて、人が合理的な選択をしない傾向にあることを解説しています。
いくつも読者に対する質問があり、お金にまつわることで非合理な選択をしがちというのを読者が体験出来るようになっています。
私の場合は、すでに投資の心理をずいぶんと理解しているためでしょうか、どの問いに対しても合理的な選択をしました。けれども、実際に大きなお金がかかっている場合、合理的な選択ができるかどうかの自信はありません。
読んですぐに合理的な選択が実生活において出来るようになるかどうかは判りませんが、人が陥りやすい罠を前もって理解しておくには良い書です。

マネーマスターズ列伝 大投資家達はこうして生まれた


ジョン トレイン/著

継続して大きな成果を上げた(上げている)投資家達17人について記しています。彼らの生い立ちや成功までの道のりを知るのも面白いですが、なにより彼らの手法が具体的に記されている点が参考になります。
どの投資家達も各人オリジナルの手法を持っています。株式に長期投資し財を成した人達が多いですが、ロバートウィルソンのような空売りを狙う人なども記されています。

トレードというビジネスで成功するには様々な方法がある、ということを改めて確認できる書でもあります。

ソロスの警告 ユーロが世界経済を破壊する


ジョージ ソロス/著

ユーロ危機に対するソロスの解答。私の理解によれば、本書の骨子は次の通りです。

単一の通貨ユーロであるのに、国債の発行は国毎のため、危機を招く。ギリシャのように、国が借りることが出来る(市場の評価による)金額以上の借り入れが出来てしまうため。今後、これを回避するには、ユーロ圏共同債を発行すること、ユーロ圏共通の財務省を創設することが必要だ。

確かに、ユーロは更なる経済的統合が進まなければ、このような危機が再び起こると私も思います。

史上最大のボロ儲け ジョン・ポールソンはいかにしてウォール街を出し抜いたか


グレゴリー ザッカーマン/著

サブプライムローンの破綻によるアメリカ金融機関の崩壊で、大儲けした人たちが描かれています。彼らは、当時の住宅バブルに対して自身で分析したデータに基づいてショート戦略を取ります。この書の主人公のジョン・ポールソンのように最高の結果を出した人もいれば、時期が早すぎてあまり結果を出すことが出来なかった人もいます。分析も正しく、大局の予想も正しい、しかし、時期が正しくないとトレードでは成功できない。そうした教訓を得ることが出来ます。

また、専門家は自分たちが何をしているのかを実は判っておらず、外部の素人でも丁寧に分析と勉強を続けていけばはるかに専門家よりも物事を理解できる、という例でもあります。トレーダーとしては、周りや専門家がこう言っているから、それでいいんだ、という態度では無く、自分で勉強し納得した上でトレードの判断をすべきということです。これは、トレードだけで無く、人生で何度も訪れる選択・決断においても同じ事でしょう。

マネー資本主義 暴走から崩壊への真相


NHK取材班/著

2009年4月~7月にかけて放送されたNHKスペシャル「マネー資本主義」をまとめた書。2008年に発生したアメリカの金融危機の原因を、投資銀行・年金基金・クォンツ・格付け会社・ヘッジファンドなどの証言から探って行きます。公的年金基金では米国最大のカルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)も取材を受けています。この基金は、GMのトップを変えたりするなど企業経営に影響を与える方針を取ったり、リスクの高い投資を行うなど、さすが資本主義を是とするアメリカらしい組織です。

今になって判りますが、当時の金融危機は100年に一度の危機では無く、住宅バブルがはじけたという歴史上何度も繰り返されているバブル崩壊による危機でした。それとあわせて政府と金融機関との不正・腐敗が危機を拡大させました。